主要国の論文共著相手国の状況 【教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】】

2024.05.22

3-3-2 主要国の論文共著相手国の状況

 ここでは、いくつかの国を取り上げ、国際共著比率の高い国はどこか、共著相手国がどこか、2001年からの20年間で注目すべき変化は何かなどについて概観する。

 前章でも述べたが、国際共著論文は多重カウントされるという特性があることに留意する必要がある。即ち、日本、英国、アメリカの共著論文1本がある場合、日本のデータの中で英国との共著1本、アメリカとの共著1本とカウントされる。ここでは各国の共著相手上位10か国のデータを示しているが、この特性からそもそも国際共著率が高い国では国別の共著比率を合計すると100%を超える場合もある。

 まず表3-20は伝統的に論文数が多い4か国の国際共著状況を示している。アメリカ、中国、英国、ドイツと言ったそもそも論文数が多い国は、当然のこととしてどの国においても国際共著相手の上位に出現する傾向がある。

 アメリカは国際共著率40%以下で、ヨーロッパ諸国に比べると国際共著率が低い。最近の共著相手のトップは中国であり、第2位に英国が続いている。日本は20年前4位であったが、現在は8位と下がっている。

 中国はまだ共著率がそれほど高くない。共著相手のトップは一貫してアメリカである。日本は20年前第3位であったが、7位まで低下した。

 英国とドイツは20年前国際共著率は30%程度であったが、現在は共に50%を超えている。相手国としては両国共にアメリカが約30%を占めてトップであり、近隣のヨーロッパ諸国が上位を占めている。日本は20年前には10位以内に入っていたが、現在は入っていない。

 表3-21に日本のデータを示す。日本の国際共著率は、17%→23%→32%と上昇してきているが、ヨーロッパ諸国に比べるとまだ低い状態である。相手国としては20年前アメリカの比率が40%を超えていたが、最近は32%となり、22%の中国がこれに続いている。中国の比率は20年で倍増した。

 以下残る表3-22では共著相手国に特徴がある国を例示している。

 インドは20年間で、2.9万→9.2万→21.0万と論文数を急増させているが、国際共著率は20%程度であまり増えていない。相手国のトップは一貫してアメリカであるが、その比率は低下している。相手国リスト常連国以外でサウジアラビアが第3位に入っていることが注目される。

 韓国も国際共著率は日本と同程度で推移しており、相手国の第3位にインド、第9位にパキスタンが入っている。

 マレーシアは共著率が50%程度でアジアの中では高い。相手国として2位にインドネシア、4位にインド、6位にサウジアラビア、7位にパキスタン、10位にナイジェリアが入っており、他の国とは少し異なった国際協力戦略をとっていることが窺える。

 表3-22のサウジアラビアは論文数を急増させていると共に、共著率が70%を超える値となっていることが特徴である。相手国としてもトップがエジプト、第2位がインドであり、第3位がアメリカとなっている。その後も、パキスタン、マレーシア、チュニジアなどヨーロッパ以外の国々が10位以内に入っていることが特徴となっている。

 エジプトはトップのサウジアラビアの比率が44%と高くなっており、サウジアラビアとエジプトは2国間の協力を充実させることを通じてそれぞれの論文数を拡大していると考えられる。

 インドネシアは最近10年で論文数が10倍以上に拡大しており、注目すべき国である。共著先はマレーシアがトップで、第2位に日本が入っている。マレーシアの共著国の第2位はインドネシアであり、マレーシアとインドネシアも2国間協力の拡大を通じて論文産出を急拡大させていると推察される。インドネシアについては、20年前の国際共著率66%、10年前の52%から現在18%に急落している。ただ、これは論文数が14倍になる中で国際共著論文も5倍に増えたが、相対的な割合が低下したものである。国際共著の増加を遙かに上回る国内論文の増加という現象は極めて興味深い。

 パキスタンも論文数を急拡大させている国の一つであるが、国際共著率が60%と高い水準にあることが特徴である。相手国も第1位が中国、第2位がサウジアラビアであり、第5位にマレーシアが入っている。

(桑原 輝隆)

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