科学技術に関する国際協力の状況 【教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】】
2024.05.22
3-3 科学技術に関する国際協力の状況
3-3-1 概況
ここでは主に論文データ(SCOPUS)を用いて、科学技術に関する国際協力の状況を概観する。科学技術分野の世界における協力の変化は短期間に大きく変動するとは考えにくいので、2001年以降の約20年のデータを用いる。この期間から2001-2003、2010-2012、2019-2021の3年間を抽出し、各期間の平均値を算出する。用いるデータは各国の総論文数、うち国際共著で書かれた論文数、国際共著が総論文数に占める割合である国際共著比率の3つに絞っている。
まず各国の論文数が増大していることが注目される。
第1位の国の論文数を見ると、38.8万→59.7万→76.9万と増加し、20年で倍増している。さらに、10位の国では、3.4万→7.5万→11.6万、20位の国では1.5万→3.3万→5.0万と言う増加を示しており、20年間で3倍以上に増えている。即ち論文数の増加率は順位の低い国々の方が高い。
続いて、各期間で上位に入った国を見ると、トップ10には欧米諸国が多いが最近では(インドの増加率が大きく、2021年には第3位はインドとなっている)。10位台や20位台の国を見ると、アジアを中心とする新興国の数が増えていることが注目される。ブラジル、イラン、トルコ、インドネシアなどの国々である。とくに、最新年で20位のインドネシアは10年前には40位までに入っていない。サウジアラビア、パキスタンも同様である。このように論文数を急増させている国は注目する必要がある。
次に各国の国際共著論文数の変化を見る。ここで国際共著とは例えば日本、英国、アメリカの研究機関に所属する研究者が共著で執筆した論文である。研究機関の所在国に注目しているので、研究者の国籍を見ているわけではないことに留意が必要である。例えば英国国籍の研究者が日本の大学に所属して論文を書いた場合これは日本の論文となる。国際共著論文には多重にカウントされるという側面がある。例えば、前述の日・英・米の共著論文1本は、日本、英国、アメリカでそれぞれ国際共著論文としてカウントされる。このことを踏まえつつ、各国の国際共著論文数を概観する。
例えば、第10位の国の国際共著論文数は1.0万→3.1万→6.5万と6倍以上に増えているが、第20位の国では0.7万→0.9万→0.9万とあまり変化していない。即ち国際共著については国によって状況が大きく異なっている。
各国の国際共著比率を見ると、20年間で全体として増加してきている。ただ、国により国際共著比率は大きく異なっており、最新の期間では英国、ドイツ、フランス、カナダが50%を超えている。これらの国々は20年前には概ね30%程度、10年前には40%程度の共著率であり、急拡大が続いている。その一方で、中国やインドは最近でも20%程度であり、20年前の約15%から微増にとどまっている。非欧米のアジア色の中でも、中国、インドのように20%程度の国もあれば、サウジアラビア、エジプト、パキスタンなど50%を超える国もあり、国により様相が異なっている。
(桑原 輝隆)
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