企業のイノベーション実現状況 【教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】】
2024.05.22
3-2-7 企業のイノベーション実現状況
世界各国において企業がどの程度イノベーションを実現しているかを比較する為、各国においてイノベーション調査が実施されている。OECD及びEurostat(欧州委員会統計総局)が共通のマニュアル(オスロ・マニュアル)を作成しており、各国はこれに基づいた調査票を企業に送付することにより統計を作成している。
この調査において、イノベーションは4分類されている。即ち、
①プロダクト・イノベーション(自社にとって新しいまたは大幅に改善した製品・サービスの市場導入)
②プロセス・イノベーション(自社の生産工程、配送などの活動で新しいもの又は大幅に改善したものの導入)
③組織イノベーション(業務慣行、職場組織編成などで新しい組織管理の方法を導入)
④マーケティング・イノベーション(自社のマーケティング手法と大幅に異なる新しいものの導入)
である。
日本語の「イノベーション」はこれまで世の中に存在しなかった製品やサービスを生み出すことというニュアンスが強いと思われるが、この調査では上記にあるように「自社にとってこれまでと違う新しいもの」はイノベーションであるという定義になっており、緩やかでより広い定義であることに留意が必要である。また、イノベーションという言葉の持つニュアンスが言語により異なることを踏まえて、アンケート調査票ではイノベーションという表現を直接は使用せず、例えば「自社にとって新しいまたは大幅に改善した製品を市場に導入した」か否かを問うと言うような工夫がなされている。
表3-19は2015年の段階における、①プロダクト・イノベーションまたは②プロセス・イノベーションを実現した企業の割合を国別に示している。
上位のスイス、カナダ、オーストラリアでは全体の実現率が50%を超えている。日本はこの中では21位に位置しており、全体での実現率は26%である。この調査では1企業を1単位として扱い企業数に占める割合を出しているが、企業の規模は多様であるため従事者数によって大企業と中小企業に分類した結果も示されている。どの国においても企業規模が大きいとイノベーション実現企業の割合は高くなっている。上位の国々では大企業での実現率は70%を超えているが、我が国の場合は大企業でも47%にとどまっている。
(桑原 輝隆)
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