ハイテク産業貿易収支 【教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】】

2024.05.22

3-2-6  ハイテク産業貿易収支

 OECDはハイテクノロジー産業を医薬品、電子機器、航空・宇宙の3つの産業と定義している。製造額に対する研究開発費の割合を産業別に計算し、その値の大きいものをハイテクノロジー産業、これに次ぐものをミディアムハイテクノロジー産業なとど整理している。

項目内訳
ハイテクノロジー産業医薬品、電子機器、航空・宇宙
ミディアムハイテクノロジー産業化学品と化学製品、電気機器、機械器具、自動車、その他の輸送、その他
ミディアムテクノロジー産業ゴム・プラスチック製品、金属、船舶製造、その他
ミディアムローテクノロジー産業繊維、食品・飲料・たばこ、金属加工製品(機械器具等を除く)、その他
その他上記以外の産業

 ハイテクノロジー産業は研究開発に多くの投資を必要とし、その製品製造過程において高度な技術を要する。このことから、ハイテク製品の輸出額等は科学技術を駆使した産業の国際競争力の一つの指標とみることができる。

 ほとんどの主要国の輸出額において、ミディアムハイテクノロジー産業は一番の重みを持っている。例えばン本の2021年の輸出額全体の中で、ハイテクノロジー産業は16%なのに対して、ミディアムハイテクノロジー産業は56%を占めている。

 ここでは、最先端技術の代表であり、各国の特徴がよく反映されているハイテクノロジー産業に焦点を当てる。

 表3-17は主要国のハイテクノロジー産業貿易の推移である。2010年代に入り、中国の貿易額が輸出、輸入共に急拡大し2020年では世界第1位となっている。中国の貿易額が輸出、輸入共に急拡大し2020年では世界第1位となっている。中国は輸出額が輸入額を上回っている。第2位のアメリカは輸出額の伸びは緩やかであるのに対して輸入額は急増しており、輸入超過の状態である。3位はドイツであり、輸出、輸入共に増加しているが、輸出額の方が大きい。

 日本はドイツに続く4位グループ(日本、フランス、英国、韓国)の一角にある。日本の特徴は輸出額がこの10か国中唯一減少傾向にある一方で、輸入額は増大していることである。日本は1990年代から2010年までは輸出が輸入を上回っていたが、2010年以降逆転して輸入額の超過が拡大する傾向にある。

 英国は輸出、輸入共にあまり変化がなく、韓国は両方共に増加していて、かなり輸出超過である。その他のロシア、ブラジル、インドではハイテクノロジー貿易額の規模がまだ小さく、かつ輸入が上回っている状況にある。

 ハイテクノロジー貿易を産業別に見ると、ほとんどの国で電子機器が多くを占めている。この傾向は中国、日本、韓国で特に強い。特に中国は輸出、輸入共に電子機器が90%以上を占めている。日本は輸出に占める医薬品と航空・宇宙の割合は10%以下である。

 これに対して、アメリカ、ドイツ、フランス、英国では医薬品と航空・宇宙の比率が大きくなっている。アメリカの輸出では医薬品が17%、航空・宇宙が25%を占めている。特にドイツは医薬品が輸出の37%を占めている。またフランス、英国でも医薬品と航空・宇宙の比率が約30%以上となっており、ハイテクノロジー貿易額から見る各国の強みが異なっていることがわかる。

 その他の国では、ブラジルで航空・宇宙の輸出に占める比率が58%と高く、インドでは医薬品が63%を占めていることが注目される。

(桑原 輝隆)

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