世界競争力ランキング(2) 【教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】】

2024.05.22

3-2-3  世界競争力ランキング(2)

 世界経済フォーラム(WEF)は、グローバルかつ地域的な経済問題に取り組むために、政治、経済、学術等の各分野における指導者層の交流を促進することを目的とした独立・非営利団体である。毎年1月頃にスイス・ダボスで開催することが慣例となっている年次総会(通称、ダボス会議)では、幅広い分野のビジネス・リーダー及び政府・国際機関のリーダー、メディア・リーダー、著名な学者等、各国の要人が参加して各種会合等が行われている。

 WEFは様々な報告書を発表しており、その一つに「国際競争力レポート」がある。2004年からこのレポートで「世界競争力指数」を用いて諸国をランク付けするようになった。この指数の算出にあたり約2/3は各国ビジネス指導層の意識調査が用いられ、1/3は公的統計に基づいている。

 なお、世界経済フォーラムでは2020年から通常のランキングを発表していない。これは主に新型コロナウイルス感染症の流行により、ランキング情報の収集や比較が難しい状況が続いているためとされている。このため、現在使用できるランキングは2019年のデータが最新である。なおWEFは2018年から指数の計算方式を改めたため、2017年と2018年で変動の大きな国はこれが影響している可能性がある。新しい指標は以下の4つの大項目で形成されている。

①     環境

制度、インフラ、ICT導入、マクロ経済安定性

②     人的資本

ヘルスケア、スキル

③     市場

製品市場、労働市場、金融システム、市場規模

④     イノベーションエコシステム

ビジネスダイナミズム、イノベーション能力

 2019年の日本の国際競争力は6位である。最新の10年間を見ても10位以内の位置で安定している。第1位はシンガポールであり、アメリカが第2位となっている。オランダ、スイスなど人口の小規模なヨーロッパ諸国が上位に位置している。アジアの国・地域としては、シンガポールのほか、香港が3位、台湾が12位、韓国が13位、マレーシアが27位、中国が28位に入っている。

 日本の評価を項目別に概観すると、環境では、インフレ率や国の債務状況等の「マクロ経済安定性」の順位は低いが、道路や鉄道等の「インフラ」や携帯電話加入者数等の「ICT導入」の順位が高い。

 また、「人的資本」では、「ヘルスケア」は第1位である。さらに、「イノベーションエコシステム」では、「イノベーション能力」が7位であり研究開発経費や特許出願などのスコアが高い。その一方労働力の多様性のスコアは低く、起業コストや破壊的なアイデアを持つ会社の割合等の「ビジネスダイナミズム」が低い。

(桑原 輝隆)

本書をご希望の方はお問い合わせください。
こちらからもご購入いただけます(AMAZON)。

©科学技術国際交流センター

本書の著作権は、科学技術国際交流センターと各著者にありますが、本書の内容を教育や科学技術イノベーションの発展のために自由にお使いいただくことを認めます。ただし、本書の引用においては、出典が「教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】」であることを明記いただくようにお願い致します。

科学技術