ジェンダー・ギャップ 【教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】】

2024.05.21

3-1-9  ジェンダー・ギャップ

 科学技術の面においてのジェンダー・ギャップの問題を概観する。図3-10は主要国における女性研究者の割合を示したものである。ここで人数はヘッドカウント(HC)によっており、研究従事率は考慮されていない。

 トップのアルゼンチンは50%を超えており、ポルトガル、スペインは40%を超えている。欧州の主要国を見ると英国が38%と高く、フランスとドイツが28%である。これらの国々と比較して日本の女性研究者率は17%にとどまっており、極めて低い水準となっている。

 今日、科学技術分野における研究成果の質を向上させるためには、様々なバックグラウンドを持つ研究者が異なる分野からのアプローチを持ち込むような環境が重要とされており、この意味で日本の女性研究者比率が極めて低い水準にとどまっていることは懸念される。特に我が国の場合少子化の進行により若手研究人材の確保が次第に難しくなってきており、この意味でも女性研究者の参入を拡大することが必要となる。

 日本の女性研究者数及び比率は過去20年以上にわたって一貫して増加はしてきている。ただ世界の水準に近づくためには、これまでにない政策の導入などが求められよう。

 更にセクター別で主要国を比較する。日本では大学が27.8%であり、企業の10.2%、公的機関の19.5%よりは高いが、英独仏の大学部門は40%あるいはそれ以上であり差が大きい。企業で女性研究者比率が低いことは各国に共通しているが、日本の企業研究者は10.2%と特に低い比率である。

 我が国の場合、科学技術を含めるすべての分野において男性に対する女性の割合が諸外国に比べ著しく低いことが大きな問題である。世界経済フォーラムが、経済、教育、保健、政治の分野毎に各指標データをウェイト付けしてジェンダー・ギャップ指数を算出している。0が完全不平等、1が完全平等を表している。2022年の指数を見るとトップのアイスランドの指数は0.908であり、続いてフィンランド、ノルウェー、ニュージーランドが続いている。北欧諸国が上位に来ている。日本の指数は0.650であり、順位は116位である。

(桑原 輝隆)

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