研究者数のセクター別 【教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】】

2024.05.21

3-1-5  研究者数のセクター別

 主要国の研究者数のセクター別内訳を表3-4に示す。日本の研究者数は2020年で68万人となっている。これはFTEカウントの値であり、日本の研究者数として90万人以上とするデータも存在するが、これはいわゆるヘッドカウント(HC)の数である。特に大学の研究者数はHCの場合、海外の大学データと比べて過大な値が出るので注意が必要である。

 研究費と同様に国により区分の違いがあるので、比較しやすい企業と大学について概観する。企業の研究数はトップの中国が133万人、2位のアメリカが115万人で、日本は第3位の51万人である。続くドイツ27万人、フランス20万人、英国13万人であり、日本の企業研究者数はこれらの国々よりかなり多い。国全体の研究者数に企業が占める比率でも日本とアメリカは70%を超えているのに対して英国は42%で有り、差が大きい。20年間の変化を見ると、日本の微増に対して、ドイツは1.6倍、フランスは1.9倍と大きな増加を示している。

 大学の研究者数については、中国の55万人を別格とすると日本の14万人はドイツの12万人、フランスの8万人より多いが、英国は17万人と日本を上回っている。特に英国は企業の研究者数より大学の研究者数が多いという特徴がある。このことから国内で大学の占める比率を見ても、日本、ドイツ、フランス、中国が20~26%程度であるのに対して、英国は55%と突出している。

 大学研究者数の15年間の時系列変化を見ると、日本は0.95倍(減少の大きな原因は研究従事率が次第に低下していることと考えられる)と減っているのに対して、ドイツ1.8倍、フランス1.3倍、英国1.2倍と増加しており人材面でも各国が大学を強化していることが窺える。

 日本の大学等における研究者のフルタイム換算係数(研究活動時間割合)は、文部科学省が調査をしている。大学教員の場合は次の通り推移し、一貫して低下してきている。

2002年度  0.465

2008年度  0.362

2013年度  0.350

2018年度  0.329

 大学研究者の活動は研究活動、教育活動、社会サービス活動(研究関連、教育関連)、その他の職務活動(学内事務等)に分類され、従事した時間が微増しており、その結果として研究活動時間割合が減少している。即ち日本の大学研究者は次第に研究に専念することが難しくなっていると言える。

 国の研究力の指標としてよく論文数が使用されるが、日本をはじめどの国においても論文生産の中核は大学である。この意味で、諸外国が大学研究者数をかなり増加させている中で、日本の大学研究者数が停滞・減少傾向にあることは大変懸念される。

 なお、公的機関の研究者数の各国内のシェア(2020年)をみると、日本は4.5%で微減傾向、ドイツは13.5%で増加傾向、フランスは9.2%で微増傾向、中国は17.5%で増加傾向である。これに対して英国は2.3%で微減傾向と、日本に比較的近い動向を示している。これらは各国の政策が反映された結果と考えることができる。

参考:文部科学省 大学等におけるフルタイム換算エータに関する調査

(桑原 輝隆)

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