研究開発費 【教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】】

2024.05.20

3-1-2  研究開発費

 ここでは各国の国全体の研究開発費を比較する。即ち政府が使用する研究開発費、産業が使用する研究開発費、その他大学等が使用する研究開発費の合計である。

 全体の傾向として、限られた上位の国々の研究開発費が非常に大きく、世界全体の相当部分を占めている。同一スケールでグラフ化すると中位以下の国のデータを読み取れないので、ここではアメリカ、中国、日本の3か国のみ最大スケール7000億ドルとし、その他の国々については適宜スケールを変更して表示している。なお、白丸は5年前、菱形は10年前を示す。上位国の中でもアメリカ及び中国の研究開発費が突出しており、日本などを加えた上位10か国で40位までの約85%を占めている。

 さらに、10年前、5年前、現在で時系列比較をすると、ほとんどの国において投資が大きく拡大していることがわかる。アメリカは10年で1.5倍に増加している。特に最近5年間の投資拡大が顕著であり1.3倍となっている。中国は10年で約2.2倍に増加している。特に2010年代の前半の5年間は75%増と急拡大した。このような急速な投資拡大の結果、中国は10年前にはアメリカの半分以下の水準であったが、最近では約7割程度の比率を持つに至っている。

 これに対して日本は10年間で1.1倍しか増加していない。世界各国の投資が急拡大する中で伸び悩んでいる状況にある。特に最近の5年間ではマイナスとなってしまっている。

 日本に次ぐ投資規模の国を見ても、ドイツ1.3倍、韓国と英国は1.9倍と研究開発費を増大させている。

 その他10年間の研究開発費増加率が高い国・地域を見ると、台湾1.7倍、トルコ2.3倍、イスラエル2.1倍、ポーランド2.6倍等の数値が目立っている。その他の多くの国・地域でも拡大が見られ、研究開発を充実・強化している国・地域が多いことがわかる。

 通常国全体の研究開発費については、その相当部分を産業が使用しており、金額の大きさや増減については、各国政府の政策と共に、各国の産業の動向が強く影響している。

 日本の研究開発について、人材と共に基本的なインプットである研究開発投資が伸びない状況が続くと、科学技術活動の停滞を招き、アメリカ、中国との差が更に開き、また、その他の国々に追い抜かれる状態になることが強く懸念される。

(桑原 輝隆)

本書をご希望の方はお問い合わせください。
こちらからもご購入いただけます(AMAZON)。

©科学技術国際交流センター

本書の著作権は、科学技術国際交流センターと各著者にありますが、本書の内容を教育や科学技術イノベーションの発展のために自由にお使いいただくことを認めます。ただし、本書の引用においては、出典が「教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】」であることを明記いただくようにお願い致します。

 

科学技術