世界の科学技術基盤の現況 【教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】】

2024.05.20

 

3-1 世界の科学技術基盤の現況 

3-1-1概況

 21世紀に入り、日本の研究者のノーベル賞受賞が相次いだ。2000年の1件を含めると2009年までに6件、2010年から2022年までで8件となっている。日本は世界でもトップクラスの科学技術力を持っており、その果実としてこのような多くの受賞者を輩出していると考えられる。

 新しい科学の成果は、評価が定まるのに時間を要するため、多くの場合ノーベル賞受賞のきっかけとなる研究は20年、30年前のものである。その意味で近年の日本のノーベル賞を生み出した研究の多くは1980年代、1990年代の研究活動に依っているとみることができる。それでは現在の研究活動は将来のノーベル賞をもたらすようなものになっているのであろうか。

 まず留意しなくてはならないことは、世界各国において科学技術を重視する政策が一層強力にとられるようになってきていることである。その結果として日本の位置はどのように変化してきており、今日どのような位置にあるのかを考察する。まず、科学技術活動の主要なインプットである研究開発費と研究人材を国際的に比較する。この二つの要素については、国全体の比較のみでなく、産・学・官のバランスがどのような状況にあるかも見ることとする。アウトプットとの関係で言うと、例えば産業界は特許への志向が強く、大学は論文への志向が強い。このことは世界共通であり、インプットとアウトプットの関係を見る際にセクター別は重要な視点となる。

 続いて、科学技術活動の主要なアウトプットである論文と特許の状況を国際比較する。ここでは最近10年程度の変化に主眼を置いて世界の中の日本を概観する。

 なお、研究者については、次世代の研究者の母集団となる大学院博士学生の国際比較も行う。さらに、近年科学技術分野も含めて日本社会全体の大きな課題となっているジェンダー・ギャップについての国際比較も行うこととする。

(桑原 輝隆)

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