高等教育への進学率 【教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】】

2024.05.14

2-2-2 高等教育への進学率 

 OECDの調査によると、大学進学者数は世界的に増加しており、表2-23が示す通り2015年の約580万人から2020年の約695万人と110万人程度増加している。また、大学進学率の平均も48.2%(2015)、49.0%(2017)、50.9%(2020)と微増傾向にある(表2-21を参照)。日本の大学進学率は、平均に近い数値で推移しており、2020年は世界平均と同じ50.9%である。トロウ(2000)の高等教育システムの段階的移行によれば、大学・短大の進学率が15%まではエリート型、15~50%まではマス型、50%以上はユニバーサル型となっており、それぞれの型により、高等教育の目的や機能、高等教育機関の特色や運営形態が異なる(表2-22 を参照)。表2-21を見ると、2020年には35ヵ国中、19ヵ国(54.2%)がユニバーサル型、15ヵ国(42.9%)がマス型に該当し、エリート型は、1ヵ国のみであった。ユニバーサル型は2015年には15ヵ国であったものが、2020年には4ヵ国増えて、19ヵ国となっていることから前述の大学進学率平均の上昇と併せて、世界的に高等教育がユニバーサル型へ移行していることが分かる。

発展途上国から先進国への移行(経済発展)、労働集約型産業から知識集約型産業への移行などにより、高等教育への需要は高まり、それに合わせて大学の増設が進めば、進学率は上昇する。ただし、大学の量的拡大は、大学の多様化につながる一方で質保証の問題を招く。その対策として、大学の適格認定(アクレディテーション)を導入する国もあれば、香港やシンガポールのように、4年制大学の進学者数を18歳人口の2割程度に抑えるよう大学の量的拡大を制限している国もある。また、欧州には、ドイツをはじめとして、初等教育修了時点で、大学に進学するコースと進学しない(職人となる)コースに分かれる国々があり、その場合、大学進学率は低めとなる。

 日本の場合、少子化で18歳人口が減少し続けているにもかかわらず、大学総数は増加傾向にあるため、大学進学率が緩やかに上昇するなかでも、私立大学の533%は入学定員未充足という状況にある(「日本私立学校振興・共催事業団」2023)。私立大学が大学全体の8割近くを占めるという世界的にも稀な状況にありながら、高等教育の費用に対する公的支援が少なく(高授業料・低支援)、かつその支援は貸与型が中心で給付型が少ないことも大学進学率が大きく上昇しない一因となっている。   

(太田 浩)

参考:

トロウ, M (2000)『高度情報社会の大学―マスからユニバーサルへ』喜多村和之編訳,玉川大学出版部、日本私立学校振興・共催事業団(2023)、「私立学校・短期大学等入学志願動向」https://www.shigaku.go.jp/files/shigandoukouR5.pdf

                              

本書をご希望の方はお問い合わせください。
こちらからもご購入いただけます(AMAZON)。

©科学技術国際交流センター

本書の著作権は、科学技術国際交流センターと各著者にありますが、本書の内容を教育や科学技術イノベーションの発展のために自由にお使いいただくことを認めます。ただし、本書の引用においては、出典が「教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】」であることを明記いただくようにお願い致します。

教育