論文数 【教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】】 

2024.05.21

3-1-7  論文数

 世界各国の論文数の状況を見る。使用したのはSCOPUSと言う論文データベースである。各国共に論文生産の主体となっているのは大学及び政府の研究機関であり、産業界の比重は小さい。従ってこのデータは各国の大学及び政府研究機関の活発さを見る指標となっている。

 2021年の論文数でトップは中国である。中国の論文数増加は極めて顕著であり、2011年の40万論文から2.2倍に増加し89万論文に至り、アメリカを追い抜いた。中国とアメリカの論文数が極めて大きな比率を示している。

 第3位にインドが入っている。インドも2011年の9.4万論文から10年で2.5倍に増加し23万論文で英国を追い抜いた。

 これに、英国、ドイツ、イタリアというヨーロッパ諸国が続き、日本は第7位である。上位の国々が10年で数十%以上の増加を示しているのに対して、日本は極めてわずかしか増えていない。このため10年前は第5位だったが、インドとイタリアに追い抜かれて順位を落としている。

 第12位のブラジルまでが年間論文数約10万の水準に達している。これら上位国の中で、中国、インドの他、ロシアの論文数増加が著しい。

 年間論文数数万件の国々の中で注目されるのは、インドネシアが10年で14.5倍に増加し、サウジアラビアも5.0倍の増加を示していることである。特にインドネシアは最近の5年間でも4.0倍に増加している。そのほか、マレーシア2.0倍、エジプト3.4倍、パキスタン3.9倍、南アフリカ2.3倍等ヨーロッパ以外の国で急速な増加を示している例が多い。論文数については北米及び欧州そして日本が世界の中心となっていたが、近年アジアや中近東諸国の比重が急拡大しており、科学研究の中心が次第に移ってきている。

 論文はその量と共に質にも注目する必要がある。表3-8は各国のトップ10%論文数を示している。論文が他の論文から数多く引用される場合、その論文の影響力が大きいと考えられる。これを表す指標としてトップ10%論文数(率)がある。これはある年に出版された論文のうち、被引用数が上位10%に入るものを数えている。従ってある国の論文中でトップ10%論文の比率が10%であれば世界平均のレベルであり、10%を超えていればその国の論文はインパクトの高いものが多いと評価できる。論文数で7位の日本は、トップ10%論文数では12位と順位が下がってしまう。10年間で論文数を急拡大しているインドネシアやサウジアラビアはトップ10%論文率も上昇している。

 多くの国々が研究活動を強化し、その結果として急速に論文数を拡大しているのに対して、日本は論文の質と量の双方で停滞状態が続いていることが強く懸念される。

(桑原 輝隆)

本書をご希望の方はお問い合わせください。
こちらからもご購入いただけます(AMAZON)。

©科学技術国際交流センター

本書の著作権は、科学技術国際交流センターと各著者にありますが、本書の内容を教育や科学技術イノベーションの発展のために自由にお使いいただくことを認めます。ただし、本書の引用においては、出典が「教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】」であることを明記いただくようにお願い致します。

 

科学技術