研究者数 【教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】】

2024.05.20

3-1-4  研究者数

 ここでは各国の研究者の総数、即ち産業部門の研究者、政府研究機関等政府部門の研究者、大学の研究者を中心とする研究者の総数の傾向を見る。研究者数についてはヘッドカウント(HC)と呼ばれる単純な人数カウントと、FTEカウントと呼ばれる専従率を考慮したカウントがある。例えば、大学の教員は研究と共に教育にも従事するので、仮にその比率が半々であれば当該教員は研究者0.5人と計算される。産業についても同様の処理が行われている。通常はFTEカウントが使用される。

 研究者の定義や数え方は国により異なっており、また、ある部門の研究者数統計が公開されてない国があるなどの事情から、国全体の研究者数を比較可能な国や地域は限られている。OECDの統計値が示されているのは29か国に限られており、アメリカ、中国、英国、フランスなど主要な国々が抜けているため、ここでは「科学技術指標2022」から数値を補っている。このため出典が混在していることに注意が必要である。

 中国とアメリカの研究者数が他国を大きく上回っているため、最大230万人のスケールとなっている。これに続く日本などは最大70万人のスケールとし、その他の国も適宜最大値を設定してグラフ化している。

 日本は第3位であるが、10年間の伸び率は5%の増加にとどまっており、多くの国々が数十%の増加を示していることと比べると低い伸び率である。

 通常国全体の研究者数の過半は産業の研究者が占めることが多く、研究者数の大小や増減はそれぞれの国の産業の動向が強く反映していると考えられる。これに続くのが大学部門の研究者数である。大学については政府の政策の影響が大きいと言える。

 研究者数が10万を超える一定規模の国で10年間の増加率が高いのは、中国1.9倍、アメリカ1.3倍、ドイツ1.4倍、韓国1.7倍、イタリア1.5倍、トルコ2.3倍、ポーランド1.9倍等である。特にトルコの増加は30国中トップであり、研究者数の変化としては極めて顕著である。これらの増加が大きい国々では産業の研究活動が活発化すると共に、国が研究人材の充実を重視し実行していると考えられる。より小規模の国においても、オランダ1.8倍、スウェーデン1.6倍、ベルギー1.5倍、スイス1.8倍のように研究人材の充実を実現している国が多い。このことは多くの国々において、研究開発力を強化するためには、まず人材の充実が重要と認識されていることを示している。

参考:科学技術・学術政策研究所 科学技術指標2022

(桑原 輝隆)

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