研究開発費のセクター別 【教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】】
2024.05.20
3-1-3 研究開発費のセクター別
主要国の研究開発費の推移をセクター別で見ると表のとおりとなっている。ここで示すセクター別金額は各セクターが使用した研究開発費である。
日本は総額ではアメリカ、中国に次いで3位となっている。しかし2000年以降の20年間の増加傾向を見ると中国が5倍増しているのは別格として、アメリカとドイツが1.7倍、フランスと英国が1.5倍なのに対して日本は1.2倍にとどまっている。
研究開発費の統計の取り方は国によって研究機関のシステムが異なることもあり、単一ではない。ここで公的機関とは政府や自治体の研究開発機関を指し、非営利団体とは財団法人等の機関を指す。例えばドイツでは公的機関と非営利団体が一括して扱われている。このため、比較的比べやすい企業と大学を中心に見ることにする。
ただし、研究費の算出方法は国により異なる部分があり注意を要する。例えば、日本の大学の研究費とドイツの大学の研究費を単純に比較できるかどうかは要注意である。このため、ここでは、各主要国のセクター別研究費のバランスと、各セクターの研究費の20年間の変化を中心に検討する。
セクター別の割合を見ると、どの国でも企業の比率が最も高く、日本、アメリカ、中国では70%を超えている。日本の場合、20年間できぎょうのシェアは66.7%から72.1%に次第に増加している。中国の企業シェアの増加は更に大きい。
企業の20年間の伸び率を見ると、日本1.3倍に対して、アメリカとドイツ1.7倍、フランス1.5倍、英国1.6倍、中国14.7倍となっており、日本企業の研究開発投資は他の主要国の企業の投資の伸びに比べて低くなっている。
国の研究開発力の比較でよく使用される論文の量については、どの国においても最大の生産セクターは大学であり、その意味で大学の研究開発費が重要である。表から、アメリカの大学の研究開発費が8.2兆円と日本の3.6兆円を大きく上回っており、また20年間の増加率もアメリカ2.2倍に対して日本は1.1倍と大差をつけられている。大学についてはドイツ1.9倍、フランス1.6倍、英国1.7倍、中国10.4倍と日本を大きく上回る増加を示している。日本の論文数が他の主要国に比べて伸び悩んでいる大きな原因が、大学への研究開発投資が停滞していることにあるのは明らかである。
なお、公的機関の割合を見ると、中国、フランスで10%を超えており、日本、アメリカ、英国は10%以下であると言うように、各国の研究開発システムの特徴が反映された結果になっている。英国の場合2000年には10%以上であったが、その後の民営化等により大きく低下している。フランスや中国においても類似の傾向が見られる。
(桑原 輝隆)
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