大学院進学者数 【教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】】
2024.05.14
2-2-4 大学院進学者数
OECD『図表で見る教育』における、2020年度の日本の大学院進学者(新規入学者)は、修士課程相当が104,575人、博士課程が15,022人であった。このうち修士課程相当には、修士課程、一貫制博士課程の前期課程の他に、専門職学位課程(約8千人)、医学・歯学・薬学・獣医学等の6年制学士課程の進学者(約2万3千人)を含んでいる。
人口千人あたりの大学院進学者数は0.95人となり、OECD加盟国中最下位である。とりわけ修士課程相当の量的規模が不十分であり、フランス、英国、オーストラリア等の大学院進学者数の多い国と比較すると、対人口比では5分の1以下の水準にとどまっている。博士課程進学者(対人口比)についても、日本はOECD加盟国中の30位程度であり、やはり十分な量的規模を有するとはいえない。しかも、日本では博士課程進学者の約4割を保健分野が占めており(保健分野の比率はデンマーク、スウェーデンなど北欧諸国をおさえて第1位)、社会科学や教育学分野が諸外国に比べて少ないなど、専攻分野の偏りも大きい。
人口比で見た大学院進学者数がきわめて少ない理由の一端は、日本はOECD諸国の中でも高齢化率が最も高いことにあろう。より根源的には、大学院修了者の職場における処遇(学位を取得することのメリット)が必ずしも明確でなく、その結果、すでに職業に就いている者が大学院へ進学することへのインセンティブが働かないことにあると考えられる。ちなみに、同データにおける2020年度の日本の学士課程進学者数約62万人であったが、人口千人当たりでは4.9人で、フランス(7.2)、英国(8.8)、オーストラリア(11.7)、韓国(7.2)などより実は少ない。こちらも20歳前後の年齢を除いた成人の高等教育への参加が低調なことに起因すると考えてよいだろう。
長期雇用を前提とするいわゆる日本的雇用慣行の下では、OJTを含めた企業内教育が社会人のスキルアップの機会として機能してきたがゆえに、日本の大学院教育、とりわけ博士課程は研究者養成に特化してきたとの見方もできる。しかしITをはじめとする技術革新によって産業構造の転換スピードが早まり、かつ、経済のグローバル化により国境を越えた労働力の流動化が不可避となる時代にあって、社会人のリスキリングの機会として、また学歴(教育資格)の国際標準化の観点からも、日本の大学院教育の充実と量的拡大を図る必要があるといえよう。
(濱中 義隆)
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